記事公開日:2020/10/01
今ここにある原風景
見渡すかぎりの青々とした水田。
収穫する日が待ち遠しい。
人々は今日も農作業を終え、徳利片手に蔵へと酒を求めにやってくる。
笑い合い、酌み交わし、
いつの間にやら大宴会。
酒はまだかい?ほらここにたっぷりと。
日々繰り返される幸せな日常。
かつてこの場所に広がっていた水田を想像できますか?
ここ香川の地は、河童の伝説が残るほど、水と縁深い水田地帯だったのです。昭和30年代までは、水田しかないのかな?と思うような場所が、40年代に入ると急激にその数を減らし、今ではそれを知っている人も少ない。
本来なら、ここは米がたくさんあるから酒造がある、という景観が自然なはずなのに、残ったのは酒造だけ。これでは本末転倒です。
その土地の声を聞き、農家と一緒になって知恵を絞って造ったお米は、この土地ならではのお酒を産み出し、この場所の景観をもつくってゆきます。おおげさに言うと、一緒に未来をつくっているわけです。それが今から100年後、200年後の未来に、自分たちの孫やひ孫が「なぜこの場所は昔ながらの景観を豊かに残して続いてきたのだろう?」と疑問に思い「どうやらここに熊澤酒造があるかららしいぞ」と答えを出したなら、そんな未来、想像するだけで楽しいではありませんか。
今、私たちは時代の流れの中で一度は失ってしまったかつての営みを、ひとつひとつ拾い上げては新しい息吹を吹き込んでいる、というところです。
熊澤酒造の周りにあった田んぼと、そこに渡る※茅花流し、お酒を飲みに集まるゆかいな仲間たち。セットで未来に残してゆきたい。それが私たちの原風景なのですから。
※茅花流(つばなながし)….茅花の花穂を吹き渡る南風のこと。