記事公開日:2021/10/01
瓦 -かわら-
熊澤酒造の庭には、よく見ると波模様があちらこちらに並んでいます。これは一体何でしょう?
正解は「瓦」。400年以上この地にある熊澤家の建物の引っ越しの際と、鎌倉の古民家を解体して組み立て直した際に出た瓦がこの庭にちりばめられているのです。
解体工事によって沢山出た瓦。地面に刺すだけでは到底使い切れない瓦たちを、どうにか使い切れないだろうか?蔵元と庭師船平さんのアイデアと経験で、敷地の色々な場所で形を変えて活躍し始めた瓦たち。
地面に刺す場合は、雨の日は濡れた地面に靴が触れなくてすむ泥よけにもなります。お店の入り口付近、特に天青ではこの瓦の波が足元からお出迎えします。雨に濡れしっとりと水分を含んだ瓦もまた風情があるものです。
カフェの入り口の壁やトラットリアモキチの奥の部屋から見える山際の崖にも瓦たちが並んでいます。並んだ瓦の壁から植物がひょっこり顔をだし、今度は植物を守る役目を果たしながらリズムや趣を加えてくれるのは何とも良い塩梅です。
瓦は今では、実家などを壊す際に利用価値がなくなり捨ててしまうことが多いのかもしれません。しかも捨てるのにお金がかかるので、ある種の厄介者になりつつある。しかし少し視点をかえれば、その波模様のようにゆるりとしたカーブは、直線構成の庭に遊びや動きをもたらします。古いものであればその土地の土で焼かれ、地域の色を反映しているので、その固有の味わい深さも庭にもたらしてくれるのです。