錆ものたち
古道具の醍醐味とは何だろう。
人それぞれかもしれない。コレクターとしての喜びや、古さそのものに対するこだわり。買い求め手にした時の喜びと、それを計算して悪くないなとニヤニヤし、さらに珍品を発見したときの愉しさとか。まったく一言では言えません。
okeba galleryで扱っているのはアンティークというよりは古小物。使われなくなった物が役割を替えて別のカタチで再びよみがえる。そこが、okebaの良い塩梅のようです。
今回は錆について考えてみます。古道具の楽しみのひとつに、使えるようにブラッシュアップするということがありますが、錆は是非そのまま愛でていただきたい。そもそも、ほとんどが取り切ることは不可能な状態なことが多いのですが。これらは「錆モノ」として、不要な物ではなく価値あるものとしてokebaでは使用したり販売したりしています。
「美しさは知識からは見えてこない。自由な眼と柔らかな心がその扉を開く鍵らしい。」
坂田和實
古道具のことばで※「見立て使い」というものがあります。本当は違うものに使われていたけれど、自分の感性ではこう使ってみようというアイデアのことを指します。古道具はこれがいくらでも出来るので、実は物の持つ「自由」を楽しむことも、醍醐味のひとつなのです。okebaでは本来の用途で使われなくなった道具や小物たちを、展示の際にディスプレイや什器として利用しています。「錆」は、作家物との相性が良く、空気をピシッとさせる力があります。一緒に置くと、道具は生き生きとして作家さんたちと善い科学反応を起こしたりします。それがokebaでの古道具の楽しみ方。そんなふうにリリースしたりプロデュースすることが日常を豊かにするのです。
そんなことばかりしているので、スタッフに「これはどんなふうに使ったらよいですか?」と質問していただいてもいいですし、逆にお客様から「こんなふうに使おうと思います」とか、お店のディスプレイになんて聞いた日には、わくわくが止まりません。一体どんな化学反応が起きてしまうんだろう?
アンティークというには大袈裟かもしれない古小物たち。それらを拾いだしては違う命を吹きこむことは宝石を発掘するようにこころ揺さぶられることです。是非okeba galleryでとっておきの宝物を発掘してください。
※「見立て使い」は黒川洋行さんが御著書『ユーズド・ミックスのススメ』で使われている。