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酒米プロジェクト

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雄町のこと

今年の新しい挑戦のひとつをご紹介します。前回少しお話しした、酒米の原種ともいわれる、“雄町”の導入で す。雄町と五百万石の2つの酒米で酒造りの検証をします。両極端ともいえる2つの酒米作りにチャレンジし、その米で酒造りすることで自分たちの理想の味を追い求めていきます。

雄町という品種は原種なので品種改良され育てやすくなった酒米とは収穫時期や肥料の具合などが異なってきます。 使っている酒米はほとんどが雄町の孫のようなもので、効率よく収穫できるように改良されてきたものなのです。何故あえて収穫率の低くなるような、育てにくい雄町を選んだのでしょうか。そこには一番難しいものにあえてチャレンジしたいという、五十嵐をはじめとする農業部の想いがありました。 雄町は他の農家さんが育てたくない品種でもあります。ですから逆に雄町が出来れば、他のどの品種でも協力農家さんにこういうお酒が造りたいのでこういう酒米を作ってほしい、という提案が出来るのです。

刈っているだけで機械が詰まり(茎が 太い)、晩成で刈り取りは11月になって しまう。その間に他の田んぼの稲が無くなるので雀の集中攻撃を受ける。栄養分の吸収率がいいので大きくなり穂のつく数が少なくならないよう、肥料のパワー バランスを吟味しなければいけない。決して簡単ではない雄町の生育。けれど出来た雄町はなんとも猛々しく生い茂っていました。他の米は耕作放棄地特有の雑草の脅威に一網打尽にされ、ダメになった田んぼもありました。そんな中雄町の田んぼは雑草をおしのけ、けちらし、精悍な姿で林立していました。これはある意味、戻ってきた原風景のひとつではないか?失われた営みの輪のひとつを雄町にみることができました。

発見した茅鼠(カヤネズミ)の巣

2021年秋、機械が上手く作動せず結局手刈りになったことで、「カヤネズ ミ」を発見しました!名前のごとく茅場 に生息し、そこで出産や育児、休憩を取 っています。とても小さなネズミで、5cm~8cm、人間の大人の親指くらい、体重は500円円玉程です。祖父母の時代 には当たり前に田んぼにいたカヤネズミ ですが、機械化によって現在絶滅危惧種となっています。稲を食べる害獣と思われていたようですが、最近の調査で稲は 殆ど食べずにスズメノヒエやイヌビエなどの雑草を食べることが確認されていま す。おとなしい生物で人家に上がり込むこともないそうです。カヤネズミが戻ってきたということは、昔の環境にこの場所が戻りつつある、ということの象徴のような気がします。昔は当たり前にあった風景が、今は驚きと発見をもって迎えられますが、このカヤネズミの存在は心底健気で奥ゆか しい。そんなふうにそっと訪れる “営みの輪” そんな手ごたえを感じながら、 熊澤酒造農業部は今日も精を出します。

 

蔵人チャレンジ「茅ヶ崎産雄町玄米全麹仕込み」

今年度の蔵人チャレンジは、酒造部 辻野美空が挑む「茅ヶ崎産雄町玄米全麹仕込み」です。

米は昨年自分たちで育てた茅ヶ崎産雄町を使用。玄米のもつ豊富な栄養素や味をお酒に再現し、何より自分たちで大切に育てた米を磨いてしまうのはもったいないという新たな境地から、精米せず玄米のまま使用することにしました。玄米には殻があるため麹菌が入り込みやすいよう発芽玄米にして菌糸の道を作るなど、前例のないチャレンジに苦労のすえ出来たお酒です。所詮健康酒でしょ、なんて侮られては困ります!予想を上回る出来に蔵人達からも喝采が送られました。辻野は、通常のお酒に比ベアミノ酸も4〜5倍含まれていて、美容と健康にも大変良いので女性にもお勧めしたい、と意気込んでいます。是非ご賞味ください。

また、このお酒を搾ってできた発芽玄米酒粕は茶色く玄米の粒が残りフルーテイな香りと味わいが楽しめます。これを使わない手はない!ということで、モキチベーカー&スイーツから、ふくよかな香りの減塩フランスパンと体に優しいスイーツが同時発売されます!若いチャレンジからまたひとつ、幸せな循環が生まれました。

蔵人 辻野 美空(つじの みそら)

平成9年生まれ。茅ヶ崎育ち。
東京農業大学短期大学部出身。
令和元年に入社し現在蔵では酒母を担当している。
蔵では一番しっかりしているが、おっちょこちょいで天然なところもある元気印。農業とバイクが大好きで、大根しょってバイクに乗っている。

茅ヶ崎産雄町玄米全麹仕込み

1本 1650円(税込)

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