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庭のこと

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古い井戸

「この地に何故造り酒屋が?」という問いの答えの一つがこの庭にはあります。現在も現役で酒造りに欠かせない存在となっている「井戸」。2Mも掘れば水が湧き出るこの場所は、豊かな水脈を持つ、稲作にはもってこいの場所。そしてミネラルを含んだ水はお酒にふくよかな味わいをもたらすのです。今回はこの庭に点在する4つの井戸をご紹介しましょう。

昔はこの浅井戸を使って酒造りをしていた

丹沢山系の伏流水は降った雨が湧き出るまでに70年ほどかかり、その間に沢山のミネラルを含みます。ふくよかな味わいに爽やかさを加えたのが熊澤酒造のお酒。以前は年に1度井戸の下に沈む砂利を担ぎ出し、綺麗に洗い清めてから酒造りを始めるのが風物詩となっていました。それが1つ目の井戸で、今も天青入口の通路脇で昔の景色を偲ばせている15M程の浅井戸です。2つ目は天青の裏手にある100Mほどの深井戸で、現在はこの井戸水をポンプで汲み上げ、ミネラルを残して不純物だけを取り除いて酒造りに使用しています。

それから庭の左手にある大きな煙突あたりに目をやると、3つ目となる7M程の浅井戸が。庭に馴染んでいて見落としがちですが、石造りで蓋がしてあり、古ぼけた手押しポンプが目印になっています。ナニワイバラが咲き乱れる初夏には、ヨーロッパの古井戸のような雰囲気を醸し出し、その前で写真を撮られるお客様をよく見かけます。

トラットリア裏手の隠れた井戸

そしてトラットリアの裏手にある池の上の通路。ここにも実はその下に4つ目の井戸があるのです。元々は酒造りに使っていた井戸でしたが、現在の形に収まり、現役でポンプアップして水庭の壁の瓦からちょろちょろと水が流れてくるようになっています。トラットリアの大窓から見える景色に趣を与えてくれています。

トラットリアの裏手の水庭

稲作が弥生時代に始まった時に「井戸」の存在はカミマツリに使う聖なる水を得るために造られたと最近の文化史では語られています。「井戸」は生命の源である「水」を得るためのツールとして儀式で重要な役割を担っていたのです。水という形を取らないものを体現する場所なので、神がかってるといっても過言ではありません。でもあまりにも自然に溶け込んでいて、見落としがちな場所でもあります。是非ここを訪れた際には古からつづく神秘的なスポットとしての「井戸」がお庭に溶け込んでいる様を観ていただきたいのです。井戸を観ながら一杯というのもまた、乙なものです。

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