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酒米プロジェクト

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茂吉が語る 熊澤酒造が酒米プロジェクトにこだわる理由

酒米プロジェクト、それはわずかに残ったこの地域の田んぼを未来に残していくための活動です。創業140周年を迎えた十数年前に改めて原点回帰して蔵の歴史を振り返った時、かつて酒蔵は広大な農地を所有してそこで取れた米で酒造りを行うのが自然の流れであったことを再認識しました。同時にこの地域の米作りの歴史は古く、太古の昔から優れた稲作地帯であったことを知ったのです。戦後の農地解放や農業政策から、米作りと酒造りは切り離され、ここ香川でも昭和30年代後半になるとベットタウン化が進み田んぼを維持することはできなくなりました。

 昭和30年代後半まで変わらぬ田園風景が広がっていた

昭和30年代後半まで変わらぬ田園風景が広がっていた

我々熊澤酒造はお陰さまで地域の皆様に愛され連日多くのお客様が、食や自然やアートを楽しんでくださっています。けれど将来、酒蔵は繁栄しているのに田んぼが全くなくなってしまっているとしたら、果たして酒蔵として存在する価値はあるのだろうか?少なくとも地域の食文化を象徴する存在としては失格ではないか。茅ヶ崎北部〜寒川、この辺りの地域は弥生時代に始まった米作りの営みが連綿と続いてきたポテンシャルの高い土地。しかし実際周辺の水田地帯を回ってみると耕作放棄地になっていて雑草だらけだったり、ゴミ捨て場のようになっている場所もあり年々加速度的にこの状態が増えていくということでした。水田は景観的な美しさだけではなく、地域の保水倉庫的な役割も果たしていて、近年の集中豪雨が増えてくると水田があることで水害を抑えることができることや、水田から流れ出る養分が川を伝って海の栄養素になり漁獲量にも影響を与えることも分かってきました。水田を守ることが巡り巡って地域の食文化を守ることに繋がるのではないかと思うようになったのです。しかも現在のお酒の自社生産量を米の量に換算すると周辺地域の水田のかなりの面積を担えることが分かりました。

湘南には熊澤酒造しか酒蔵がないので、今後耕作放棄地を全てまかなえるような存在が自分達しかいないのならば、それをやるのが我々の使命ではないかと考えたのです。更に全量地元産米の酒造りが大変難しいと言われるこの地域で実現できれば、この取り組みがモデルケースとなって酒蔵がある地域は豊かな水田が残るということになり、社訓である”よっぱらいは日本を豊かにする”、を実現することに繋がるのではないかと密かに思っています。

僕の好きな映画で「※素晴らしき哉、人生」という映画があります。酒米プロジェクトに取り組んだ未来と取り組まなかった未来を想像した時、僕は、この地域に熊澤酒造があったからこんな豊かな食文化が生まれたんだと言われるような未来を見てみたいのです。

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未来に水田を残すことが地域の食文化を守り、ひいては日本の未来の姿にも影響していくと信じて、熊澤酒造は酒米プロジェクトに邁進します。引き続きの応援よろしくお願いします!

 

 

※1946年アメリカ映画。人生に絶望し自殺を図ろうとする主人公が、天から遣わされた天使見習いに救われる。そして自分のいない世界では、街も人の心も荒んでいる様子を目の当たりにする。自分が取り組んできた仕事が、人々や街の未来に大きく影響していたことを知り、自分の価値に気づき立ち直るハートウォーミングストーリー。クリスマスにオススメです。

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