ローカルプロダクトシリーズのはじまり
それは大磯こたつみかんエールというビールから始まりました。
依頼主は熊澤酒造の社外プロジェクトのひとつ「暮らしの教室」で交流のあった原大祐氏が運営する「NPO法人西湘をあそぶ会」。彼らは本拠地である大磯に、古くから自生している貴重なミカン畑が荒廃しているのを知ってそれを守る活動をはじめました。12月に収穫した無農薬で育てたそのミカンを、「お正月に箱根駅伝をこたつに入って見ながら食べる為の無農薬ミカン」ということで「こたつみかん」と名付けました。そのミカンを使ったビールが出来ないかと相談を受けたのです。
この依頼は、ただ自分のところで作ったミカンをビールにしてほしい、という単純なものではありません。放棄されていた農地を再生することで大磯らしい景観を復活させ、そこで穫れたものを楽しく豊かに味わうという、ポジティブスパイラルっぷりに共感した熊澤酒造。香り高い皮と酸味たっぷりでジューシーな実をふんだんに使ったフルーツエールに仕上げ、2012年ローカルプロダクトシリーズが始まったのです。
1996年湘南ビールがスタートした当時、ドイツスタイルのピルスナー、シュバルツ、アルトという3種類の定番に、1種類の限定ビールというラインナップだったものから、日本酒のように季節感のある酒造ならではの展開が始まりました。
「大磯こたつみかんエール」のラベルのデザインはNPOが公募して茅ヶ崎の野口里子さんのデザインを採用しました。2月に発売すると初日に完売するほど評判を呼び、それ以降同じく絶滅の危機にあった小田原市片浦地区のレモンをはじめ、県内の農産物を使用したビールが一つずつ誕生していきました。
今では年間11種類程となり、「ローカルプロダクトシリーズ」として発売されています。
(そのうち8種類がボトルでも発売)