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日本酒のお話

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蔵元が語る 防空壕ものがたり

熊澤酒造のシンボルである煙突の奥、ちょうど裏山の際に建っている寂れた小屋をご存知だろうか。よく見ると粕小屋という看板がぶら下がっている。ここは古くから、酒粕を長期熟成させて出来上がる真っ茶色の熟成粕(練り粕)にするための場所だ。だが僕にとっては幼い頃のとっておきの秘密基地で、小屋の奥の扉を開けると真っ暗な洞窟があり、生活道具らしきモノや便器まで置いてある恐ろしくも特別な場所だった。当時、蔵の周辺にはいくつもの洞窟らしき穴があり悪友と秘密基地ごっこをしたものだ。物心ついた頃、それが第2次世界大戦の時に作られた防空壕だと知ることになるのだが、当時の僕は周辺の洞窟に比べ我が家のそれが、長くて広いのが自慢だった。それは蔵人達も逃げ込まなければならないからだったのだけれど。

蔵を継ぎ、天青が誕生して数年経った2004年、天青シリーズでお燗に合う酒を造ろうということになった。その時思い出したのが、この秘密基地だった。

天青は冷酒を基本にしているので、冷蔵庫で低温熟成して出荷する。一方お燗に向く酒というのは、より複雑な味わいのお酒を一定の温度で長期保管することが望ましい。防空壕は土の中にあるので、一年中日が入らず、壕内は15〜25度と理想的な環境だった。以来毎年春に出来上がる山廃造りの純米酒を、1年から1年半寝かせて「吟望天青 防空壕貯蔵」という名前で出荷していて、お燗にお薦めのお酒となっている。また、日本酒の他にも、2年前には熊澤酒造150周年記念にスペシャルビールを造ろうと思い立ち、オーク樽に入れたサワービールというヨーロッパの伝統的スタイルのビールを寝かせている。来年の秋頃の出荷を目指し、ひっそりと熟成中ですのでこちらもご期待いただきたい。

さて、この手掘りの防空壕。長年のお酒の出し入れで崩れた壁面の修繕作業が継続中です。長引くコロナ禍で時間に余裕ができたスタッフ達も加わり、日々泥まみれになって汗を流しています。転んでもタダじゃあ起きない熊澤酒造。これを機に農業部に続き土木部発足となるのでしょうか?!続報をご期待ください!

 

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