広がり続ける営みの輪
熊澤通信発刊とともにお伝えしてきた酒米プロジェクト。初年度、一反(300坪)の田んぼから始まったプロジェクトは昨年には一町歩(3000坪)にまで増え、今年は2町歩(6000坪=20反=2町歩)になる予定。営みの輪は3巡目を迎えています。
この輪っかは、突然現れたものではなく過去から現在まで受け継がれてきたものです。その輪の中に入る。それはまるで参加者がお互いに協力し合い、試練を乗り越えて目的を達成するロールプレイングゲームのような道のりでした。
プロジェクトリーダーのひとり、五十嵐は語ります。
「ドラクエ(ロールプレイングゲームの代表となったゲーム)のように、毎日手探りで地道に訪ね歩き〝獲得していく〟日々だった。」
と今回はそのロープレで協力農家さんの協力を得るまでのお話です。
素人が始めた田んぼに、周りの目は始めから好意的だったわけではありません。脈々と続いてきた輪の中に入るのはたやすいことではありませんでした。農家さんにしてみれば代々受け継いできた田んぼをいきなり現れた新参者にホイホイ貸すわけにはいかないのです。そこで朝早く行って近所の人と交流をし、仲良くなり信頼を得て情報のネットワークを広げていきました。
そうして徐々に田んぼを増やしていった五十嵐の奮闘ぶりをマップにしてみたので是非ご覧ください。
「休みの日もずっと考えている」と語る五十嵐。定点カメラを置いてもいいと言うくらい、田んぼにつきっきりの毎日。田植え後や稲刈り後でも、周りの草刈りや掃除は欠かせません。それは周りの農家さんへの気遣いでもあるのです。
現在協力してくださっている農家さんは寒川、茅ヶ崎、藤沢、横浜に分布しています。しかし前例のない私達の取り組みは、はじめはある意味行き当たりばったり。試行錯誤を繰り返し、ようやく協力農家さんに辿り着くことができました。
横浜と聞くだけで「え?そんな離れているところも?」と感じてしまいますが、マップを観ていただくと分かるように川を挟んですぐ隣なのです。その横浜では自分たちで作った酒米で今年初めて「横浜魂」というお酒を作りました。そして、2月に販売して一瞬で売り切れてしまいました。藤沢や寒川、茅ヶ崎でも新たに田んぼが増えていく予定。このマップもどんどん変化していくことでしょう。
着々と広がりを見せる中、もちろんすべてが順調なわけではなく今年は様々な機械の導入もできたものの、全員が未経験で見よう見まねです。秋に稲刈りをする際、勇者たちはもう泥まみれで田んぼの中で奮闘していました。耕作放棄地だった田んぼの水はけが悪く、でこぼこの泥上になった地面に機械が足を取られます。板を継いで引っ張り出し、尻もちをつく部員たち。やっとこさ抜け出せても機械の中でうまく稲が回らず結局手刈りに…。頼りのリーダーの一人農太郎は機械がまったくダメ。機械が壊れると叩いて直すタイプで、五十嵐も苦笑です。機械が増え、良い面が現れても壁はいくらでも立ちはだかる。勇者たちの戦いはこれからも続きます。
米づくりというのは、ただ稲を植えて収穫することだけではなく、ほかにも沢山やることがあります。今年は米づくりの他に、米を作らない田んぼで来年に向けて土地を慣らしていく作業をします。今回の稲刈りでは、除去しても生えてくる雑草に悩まされ、米作りが上手くいかなかったところもありました。その経験を生かし、地下で繋がってる雑草の根っこを何度もトラクターで耕し粉々にして草が生えないようにします。一枚の田んぼにトラクターで2時間は掛かるのでけっこう地道な作業です。
田んぼを支える通年コアメンバーの西原さんと屋地くん。二人は普段モキチの料理スタッフ。