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古道具のある暮らし

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看板

一見目新しいような、けれどもどこか懐かしさも感じるような看板たちがたくさんある熊澤酒造。

いったいこの不思議なものたちはどこからきたのでしょうか。

今回はそんな今と昔が溶け合う熊澤の愉快な看板たちのお話です。

 

@熊澤酒造正面入り口

熊澤酒造の入口にあるくるくると蛇がとぐろを巻いたような珍しい形の照明。

 

 

雨の日も風の日も変わらずその一隅を照らしてきた熊澤の門番であり看板でもあるこちらは、100年以上前に酒造りの現場において温度調節の役割を担っていた蛇管という道具でした。今は熊澤の目印として緑のトンネルの入口で暖かい光を灯しながら、小さな森への案内役を担っています。

 

 

@okeba gallery&shop

古い倉庫を改築したokeba gallery&shopの入口には表札のような情緒ある看板があります。こちらもかつて酒造りの現場で醸造器具の部品として活躍していました。酒造りの道具の一部だった無骨な鉄の一片は時を経て豆電球と出会い「okebaの入口はここだよ」とやさしく知らせてくれる大切なシンボルになりました。

 

 

@MOKICHI KAMAKURA ハーブガーデン

昨年12月にオープンした鎌倉店にも面白い看板が。店の横に広がるハーブガーデンへと誘ってくれるこの看板、なんと元々は精麦工場で長く使われていたゴミ箱だったとか。それが今度は植木鉢として使われた後、いつの間にやら看板に…。重ねた月日を感じさせる趣深く愛おしいその錆が、経験の深さを物語っています。

 

ハイキングコース入口にも引き戸の板を再利用した看板があります。

 

@MOKICHI FOODS GARDEN

MOKICHI FOODS GARDENの入口にいつも静かに佇んでいるのはちょっとインダストリアルで不思議な看板。なんだかロボットのようなSFっぽいその子は、かつてこの場所にあった精麦工場で稼働していた古い機械を受け継いだもの。ここでは心機一転、今はすっかりお客さんのお出迎えも板に着いている様子です。

 

レストラン入口では当時の精麦工場の看板も残っています。

 

@蔵元直売所地下室

モキチカフェの階段を降りると日本酒やビールを直売する地下室があります。

 

 

敢えてちょっぴりわかりにくい秘密基地のような部屋をこっそり教えてくれるこの風変わりな看板、実は100年以上も昔のお酒を搾る道具とのこと。木に染み込んだ当時の時間が、カフェの古い梁や柱たちと心地よく融和して他の看板にはないここだけの味わいと貫禄を纏っています。

 

こんなふうに熊澤酒造では看板の数だけ個性豊かな物語があり、まさか自分が看板になるなんて思ってなかったであろう多様な背景のある古道具たちが看板としての新たな役目を担います。

かつてokebaが桶の修理場であったように、壊れた道具は修理して使う。そして役目を全うした道具にはまた新しい仕事を与える。ひとつの役目を終えることが道具としての終わりではなく、また違った役割を模索し新たな命を吹き込む。次はどんな風に使おう?と考えることを自由に楽しみながら道具を永く大切に愛でる精神は、先人から受け継ぎ大切にしてきた熊澤酒造の哲学なのかも知れません。

ものや情報の消費される速度が日々加速する今の世の中。時代の変遷と共に道具の在り方も変わり、人の命は延びても道具の命は昔より短いかもしれない。瞬きする間に新しいものが生まれてはまたひとつ消えていく毎日の中でも、古いものに宿る知恵や美しさに気づく心を持つ。そしてそれを次の世代へ繋いでいけたならそれはとても素敵なことです。

熊澤へお越しの際はぜひ看板にも注目して、その道具たちが過ごしてきた時間や見てきた景色に想いを馳せてみてください。古道具たちもきっと喜んでくれるに違いありません。

何十年、或いは百年以上前から人の営みの中にあった古道具たちは、看板となって今日も生き生きとわたしたちを迎えます。

 

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